素人ライダー山田~55歳からのバイクライフ

50代から大型バイクを楽しむ。

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初心者がやりがちな失敗とエンジンガードの重要性

納車の喜びから一転、ガソリンスタンドで起きた悪夢のような出来事

念願の大型バイクが納車されたあの日、私の心は少年のように躍っていました。ピカピカに磨き上げられたタンク、重厚なエンジンの鼓動、そして新しい革の匂い。すべてが輝いて見えました。ショップの店員さんに見送られ、公道へと走り出した瞬間は、まさに人生のハイライトと言っても過言ではありませんでした。しかし、その高揚感はわずか数十分後に脆くも崩れ去ることになります。

最初の目的地は、自宅近くのセルフガソリンスタンドでした。慣れない巨体を慎重に操り、給油レーンへと滑り込みます。ここまでは順調でした。問題が起きたのは、給油を終えて出発しようとしたその時です。出口に向けてハンドルを右に切りながら微速前進していた際、前方から入ってきた車に驚いて、反射的にフロントブレーキを強く握ってしまったのです。

ハンドルを切った状態でフロントブレーキを握ればどうなるか、教習所でも口酸っぱく言われていたはずでした。しかし、300kg近い鉄の塊は、傾き始めたら人間の力ではどうすることもできません。「あっ」と声を上げる間もなく、私の愛車はスローモーションのように右側へと倒れ込んでいきました。必死に支えようとしましたが、55歳の足腰では耐えきれず、膝から崩れ落ちるように転倒。ガソリンスタンドのスタッフさんが駆け寄ってくれるまでの数秒間、私はアスファルトに横たわる愛車を前に、ただ呆然とするしかありませんでした。納車からわずか30分、走行距離にして5キロ未満での出来事です。恥ずかしさと情けなさで、ヘルメットの中で顔が燃えるように熱くなったのを今でも鮮明に覚えています。

直視できない愛車の傷と、財布に冷水を浴びせる修理見積もりの現実

スタッフさんと協力してなんとかバイクを引き起こしましたが、そこには目を覆いたくなるような惨状が広がっていました。右側のブレーキレバーは根元から曲がり、美しいクロームメッキのマフラーには無残な擦り傷が刻まれていました。そして何よりショックだったのは、タンクの右側面に小さな、しかし確かな凹みができていたことです。立ちゴケした際に、ハンドルのスイッチボックスがタンクに干渉してしまったようでした。

「走る分には問題ないですよ」と慰められ、ほうほうの体で帰宅しましたが、翌日ショップに持ち込んで出された見積もりを見て、私は再び膝から崩れ落ちそうになりました。曲がったレバーの交換、マフラーの傷、そしてタンクの補修。特にタンクの板金塗装とマフラー交換を含めると、修理費用は驚くべき金額になりました。その額、なんと十数万円。大型バイク、特に輸入車の部品代がこれほど高額だとは、頭では分かっていても現実として突きつけられると目の前が暗くなります。

立ちゴケは「誰もが通る道」と言われますが、その通行料はあまりにも高額でした。初心者がやりがちな「ハンドルを切った状態での急停止」や「足場の悪い場所での停車」は、知識として知っていても、とっさの判断で体が動かないものです。この高い授業料を払ったことで、私の安全意識は劇的に変わりましたが、同時に「もしあの装備さえあれば」という後悔も強く残りました。そう、納車時には「スタイルが崩れるから」と敬遠していたエンジンガードです。

精神的なお守り以上の効果を発揮するエンジンガードは初心者の必須装備

修理から戻ってきた愛車には、すぐにエンジンガードを取り付けました。以前は「野暮ったくなる」と思っていたそのパイプも、今では頼もしい守り神に見えます。実際、エンジンガードを取り付けてから半年ほど経った頃、ふとした拍子に砂利で足を滑らせて再び立ちゴケをしてしまったことがありました。しかし、今回は違いました。

エンジンガードが支点となって車体を支えてくれたおかげで、車体と地面の間には十分な空間が確保されていました。そのため、タンクやマフラーはもちろん、レバー類も地面に接触することなく無傷。傷ついたのはエンジンガードの下部だけでした。あの悪夢のような修理費がかからなかったことはもちろんですが、何より「足を挟まれずに済んだ」という安心感が大きかったです。もしガードがなければ、私の右足は300kgの車体の下敷きになり、骨折などの大怪我を負っていたかもしれません。

また、最近ではスライダーと呼ばれる樹脂製の保護パーツも人気ですが、重量級のクルーザータイプに乗る私たち世代には、より強固なパイプ形状のエンジンガードを強くおすすめします。見た目の好みはあるでしょうが、立ちゴケのリスクが高い初心者期間だけでも装着しておくことで、心の余裕がまったく違います。「倒しても大丈夫(軽傷で済む)」という安心感は、ガチガチになりがちな初心者の運転操作にリラックスをもたらし、結果として立ちゴケそのものを防ぐ効果もあるように感じます。格好つけるのは運転技術が伴ってからでも遅くはありません。まずは愛車と自分の身体、そして財布を守るために、転ばぬ先の杖を用意すること。これが50代からのバイクライフを長く楽しむための、最初の知恵だと言えるでしょう。

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